地域の教員不足解消へ、高大連携!
―教員志望の高校生が教育学部の授業に参加
茨城大学教育学部で11月21日(木)、茨城県立鉾田第一高等学校の教員養成講座の1?2年生35人が学部の授業に参加する高大連携事業が行われました。同日の2?3限目に同学部で開講されている授業科目の中から、高校生が興味のある科目を選んで授業に参加しました。教員志望の生徒を高校として支援している同高との連携により、県内における教員不足の解決への貢献を目指す取り組みです。
鉾田第一高等学校は、キャリア教育の一環として、教職に興味?関心を持つ生徒向けの教員養成講座(学校の先生になろうプロジェクト、GSNP)を開講しています。生徒たちは同高附属中学校での授業参観や給食?清掃指導のほか、近隣小学校での授業補助などの活動に参加しています。今回の来訪は、今年9月に太田寛行学長らが同高を訪れた際に高校側から提案があり、実現しました。
2限目は4科目が公開されました。この時間帯は、見学が中心です。
「保健科教育法I」(青栁直子教授)では、養護教諭を目指す私服の学生たちの後方に、制服に身を包んだ高校生の姿がありました。約10年ごとに改訂される学習指導要領について、なぜ改訂が必要なのか、変更点はどこか、変更の背景はなにか...などの詳しい解説を、真剣な面持ちで聞き入っていました。ワークショップでは、学生に交じりディスカッションしました。
3限目は教育学部の学生が中心となり、各選修やコースについて紹介。
特別支援教育コースでは、さらにVR機器を用いた教材などの体験も実施しました。
白いゴーグルをつけ、手にリモコンのようなものを持ちながらたたずむ高校生。じっとしていたかと思うと、「乗れました!」と声を弾ませます。VR機器を使い、電車に乗る練習をしています。外から見ていると何をしているのかわかりませんが、ゴーグルには上下左右360°に駅などの映像が映し出されており、手元のコントローラーで行き先などを選びながら、目的の電車に向かっています。実際に駅に行く前の段階で使用することで、事故等を未然に防ぐことができます。
防災に関する学習も可能です。外を歩行中に突然地震が起き、塀から離れるべきか否か、最も近い避難場所はどこか...などを考えながら、避難します。一般的に学校で行っている避難訓練に比べて、想像することが難しい児童生徒もリアルな体験ができます。また、学校外での災害の対応の仕方も学ぶことができます。
ゴーグルに映し出される映像は、特別支援教育を学ぶ学生が撮影しました。
VR機器のお隣では、高校生が機械の付いた眼鏡をかけていました。こちらは、人の視線を可視化し、録画できる眼鏡。かけている人がどこを見ているのかがわかります。例えば、聴覚障害のある幼児と遊ぶ父親の視線の動きを記録した映像を見れば、聴覚障害のある子どもに対して、どこを見るとコミュニケーションが取りやすいのか、どういう時に目線が合いやすいのか、などを学ぶことができます。
近赤外線を使って脳の血流を測る機械も体験しました。「30秒間、何も考えないでください」「20秒間、『し』で始まる言葉をたくさん言ってください」「何も考えないでください」......。学生が指示し、頭にセンサーを巻き付けた高校生が従います。モニターを見てみると、「『し』で始まる言葉」を考え話している時だけ、脳の左側を中心とした領域の血流が増加することがわかりました。言葉をつかさどる部分が活動している証です。この機械を使えば、学習のつまずきの背景にある原因を推測することや、言葉で意思を示すことが難しい子どもの好みなども推測することができるそうです。
鉾田第一高等学校1年の大曽根心空さんは、VR機器での体験に大興奮していました。「学校の中限定の避難訓練ではなく、学校以外でどう避難させるのか、教育のイメージがわかりました」と充実した表情で話しました。
VR機器の説明を担当した教育学部3年の福田愛友さんは「高校生の反応を見て、障害のある子にもない子にも有効な教育だな、と気付きました」。VRの映像について「もっと見やすくするには、もっと楽しく勉強してもらうには、難易度は適切か、いろいろと考えるきっかけになりました」と学びがあった様子でした。
茨城大学は2026年度入学者選抜(2025年度に実施)より、教育学部において総合型選抜を初めて導入し、新たに「地域教員希望枠」を設けます。小学校教員の不足、支援を必要とする子どもの増加、AI?データサイエンス教育を推進する教員の必要性など、さまざまな課題の解決を図るため、茨城県教育委員会との連携により実施するものです。この観点からも、茨城大学教育学部として、地域において教員養成の取り組みを強化している高等学校との連携を今後も推進していきます。
(取材?構成:茨城大学広報?アウトリーチ支援室)